『空を翔けぬ夢』
冒険者は最初の街で、さまざまな危機を乗り越え、多くの人々を助けてきた。
その献身と確かな力が認められ、都市の指導者から「三国を結ぶ親書を運ぶ親善大使」に任命されたのだった。
森の都、海の都、砂の都——
冒険者は三つの都市を巡り、それぞれに友好の証を届けるという役目を、無事に果たした。
飛空艇発着場に立つと、澄み渡る空の下でハイウィンド飛空社の職員が静かに近づいてくる。
その両手には、小さな木箱が大切そうに抱えられていた。
「親善大使殿。あなたは、三国を結ぶ航路を正式に開く最初の乗客の一人です。その記念に、これを」
職員が箱の蓋を開く。
中に入っていたのは、精巧なからくり模型だった。
小さなプロペラが風を受け、ゆっくりと回っている。
船体には、「Invincible」の文字が刻まれていた。
職員は、どこか遠い昔を思い出すような目で語り始める。
「これは、創業者タタノラ様が造った『インビンシブル号』です。大型の船を流用し、十年もの歳月をかけて造り上げた……『不沈』の名を冠した、夢の飛空艇」
少しだけ、言葉を止める。
「けれど、事故と妨害、そして未熟さに阻まれ……この船が空を飛ぶことは、一度もありませんでした」
模型のプロペラが、かすかに音を立てた。
「それでも、その失敗があったからこそ、今の飛空艇は空を翔けています」
職員は、そっと模型を見つめる。
「飛べなかった夢を……せめて、あなたの傍で飛ばせてあげてください。マメット・インビンシブルです」
冒険者がそっと手を差し伸べる。
すると模型は、ふわりと宙へ浮かび上がり、肩の上へと軽やかに着地した。
まるで——。
「今度こそ、一緒に空へ」
そう囁いているかのようだった。
職員は穏やかに微笑む。
「失敗した夢も、形を変えれば誰かの希望になる」
そして、静かに続けた。
「どうか、この子と共に。どこまでも」
こうして冒険者は、空を翔けることのできなかった伝説の飛空艇を
最初の空の仲間として、旅に迎えた。

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